自営業の年金はいくら?受給額の目安と増やす5つの対策を解説

- 自営業者が加入するのは国民年金のみで、受け取る年金の中心は老齢基礎年金です。
- 2025年度の老齢基礎年金の満額は月額69,308円、40年間納めて初めて満額になります。
- 2025年度の国民年金保険料は月額17,510円の定額です。
- 付加年金は月400円の上乗せで、納めた月数×200円が一生もらえます。
- 国民年金基金とiDeCoは合算で月68,000円まで掛けられ、掛金は全額が所得控除になります。
自営業の年金とは?会社員との違いと基本のしくみ

自営業者が加入する公的年金は国民年金だけで、会社員のような厚生年金は原則ありません。
日本年金機構は、自営業・学生などを「国民年金に加入の方」として案内しています。日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が対象です。
自営業者が加入するのは国民年金のみ
個人事業主・フリーランスは国民年金の第1号被保険者になります。これがまず大前提です。
私が会社を辞めて開業したとき、最初にやったのも市区町村の窓口での国民年金の切り替え手続きでした。厚生年金からは自動的に外れます。
会社員・公務員は国民年金と厚生年金の2階建て
会社員や公務員は、1階の国民年金に加えて2階の厚生年金にも加入します。いわゆる「2階建て」です。
給料から天引きされる厚生年金保険料には、会社が半分を負担してくれる仕組みがあります。ここが自営業者との大きな差です。
自営業の年金が会社員より少なくなる理由
自営業者の年金が少なくなる理由は、2階部分の厚生年金がないからです。
会社員は基礎年金に厚生年金が上乗せされますが、自営業者は老齢基礎年金が中心になります。だからこそ、自分で上乗せの手を打つ必要があります。
自営業者がもらえる年金はいくら?納付年数別の早見表
40年間きっちり納めた自営業者の老齢基礎年金は、2025年度で満額の月額69,308円です。

老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間、保険料をすべて納めた場合に満額になります。納付月数が足りないと、その分だけ減ります。
老齢基礎年金の計算方法
計算はシンプルで、満額に「実際に納めた月数÷480か月」を掛けます。
480か月は40年分。たとえば30年(360か月)しか納めていなければ、満額の4分の3になる計算です。
納付年数別の受給額モデルケース
満額の月額69,308円をもとに、納付年数別の目安を表にしました。あくまで2025年度の満額から計算した概算です。
| 納付年数 | 納付月数 | 月額の目安 | 満額との差 |
|---|---|---|---|
| 40年 | 480か月 | 約69,308円 | 満額 |
| 30年 | 360か月 | 約51,981円 | 約-17,327円 |
| 20年 | 240か月 | 約34,654円 | 約-34,654円 |
| 10年 | 120か月 | 約17,327円 | 約-51,981円 |
正直に言うと、20年で月3万円台というのは厳しい数字です。未納期間がある人ほど、後述の追納や任意加入を真剣に検討してほしいです。
上乗せされる年金生活者支援給付金
老齢基礎年金が少なく一定の所得要件を満たす人には、年金生活者支援給付金が上乗せされます。
これは老齢のほか、障害・遺族の年金を受ける人向けにも用意されています。受給には所得などの条件があるため、自分が対象か日本年金機構で確認するのが確実です。
国民年金の保険料と免除・猶予制度を使うときの注意点
2025年度の国民年金保険料は月額17,510円の定額で、収入にかかわらず同じ額です。

払えない時期に何もしないで放置するのが一番もったいない。免除・猶予の制度を知っておけば、将来の年金を守りながら乗り切れます。
国民年金保険料はいくらか
保険料は所得に関係なく一律です。これは会社員の厚生年金が収入に応じて変わるのと対照的です。
全額免除・一部免除・学生納付特例・産前産後免除
保険料を払うのが難しいときは、申請による免除・猶予の制度があります。
所得に応じて全額・4分の3・半額・4分の1の免除があり、学生には学生納付特例、出産前後には産前産後免除が用意されています。
| 制度 | 主な対象 | ポイント |
|---|---|---|
| 全額・一部免除 | 所得が一定以下の人 | 申請して承認されると保険料が減免される |
| 学生納付特例 | 在学中の学生 | 在学中の納付を猶予できる |
| 産前産後免除 | 出産前後の被保険者 | 免除期間も保険料を納めた扱いになる |
免除が将来の年金額に与える影響
全額免除を受けた期間は、未納とは違い、将来の年金額に一部反映されます。
ただし全額納めた場合より受給額は下がります。未納はゼロですが、免除なら一定割合が確保される。この差は大きいので、払えないなら未納放置より必ず免除申請を選んでください。
追納・後納で受給額を取り戻す方法
免除・猶予を受けた期間は、あとから追納すれば満額に近づけられます。
私が窓口でよく勧めるのは、開業初期に免除を使った人が、収入が安定してから追納するパターンです。家計に余裕が出たタイミングで、減った分を取り戻せます。
自営業者が年金を増やす5つの対策と組み合わせ方

自営業者が年金を増やす柱は、付加年金・国民年金基金・iDeCo・個人年金保険・任意加入の5つです。
全部やる必要はありません。掛金の上限と節税効果を見ながら、自分の家計に合う組み合わせを選びます。
付加年金で手軽に上乗せする
付加年金は、月400円の付加保険料を上乗せして老齢基礎年金を増やす制度です。
受取額は「200円×付加保険料を納めた月数」が老齢基礎年金に毎年上乗せされます。2年受け取れば元が取れる計算で、自営業者の第1号被保険者で保険料を全額納めている人なら、まず検討する価値があります。
国民年金基金で老後を厚くする
国民年金基金は、自営業者の年金上乗せのための公的な補完制度です。
掛金は月額68,000円が上限で、複数口の加入もできます。掛金は全額が所得控除の対象。終身で受け取れる型を選べるのが安心材料です。
iDeCoで運用しながら備える
iDeCoは自分で掛金を運用しながら老後資金を作る制度で、自営業者の拠出上限は月額68,000円です。
運用なので増える可能性も減る可能性もあります。それでも掛金が全額所得控除になる点は強力で、私はフリーランス時代にここを優先しました。
国民年金基金とiDeCoの掛金上限68,000円の配分
国民年金基金とiDeCoは併用できますが、合算で月額68,000円が上限です。
つまり片方を5万円にしたら、もう片方は1.8万円までという関係。どちらにいくら振るかは、確実性を取るか運用益を狙うかで決まります。
| 重視する点 | 向く配分の例 | 理由 |
|---|---|---|
| 受取の確実性 | 国民年金基金を厚めに | 終身受取の型を選べる |
| 運用益と柔軟性 | iDeCoを厚めに | 運用次第で増える可能性がある |
| バランス | 半々に分ける | 確実性と運用の両取り |
節税効果と各制度の併用可否
これらの制度の魅力は、掛金が所得控除になる節税効果です。
付加年金・国民年金基金・iDeCoの掛金は所得控除の対象になります。所得が高い人ほど節税の効きが大きく、年金を増やしながら今の税負担も軽くできます。
受給額を調整する繰り上げ・繰り下げと任意加入のしくみ
年金は受け取り始める年齢を早めたり遅らせたりでき、それで受給額が一生変わります。

原則65歳の受給開始を前後にずらせます。早めれば減り、遅らせれば増える。ここの判断は老後設計の分かれ道です。
繰り上げ・繰り下げによる増減と損益分岐点
繰り上げ受給は早くもらえる代わりに年金額が一生減り、繰り下げ受給は遅らせるほど増えます。
早くもらった分、長生きすると総額で逆転する「損益分岐点」が出てきます。健康状態や他の収入を見て、自分が何歳まで働くかとセットで考えるのが現実的です。
60歳以降の任意加入で未納を補う
40年に満たない人は、60歳以降に国民年金へ任意加入して納付月数を増やせます。
若い頃に未納や免除があって満額に届かない人にとって、これは満額に近づける有効な手段です。私も窓口で「あと数年足りない」という相談をよく受けますが、任意加入で取り戻せるケースは多いです。
受給開始後の年金にかかる税金と確定申告
受け取った公的年金は、原則として雑所得として課税の対象になります。
一定額を超えると確定申告が必要です。iDeCoや国民年金基金を一時金で受け取るか年金で受け取るかでも税の扱いが変わるため、受取時期が近づいたら一度試算しておくと安心です。
【独自視点】年金だけに頼らない老後資金の総合プラン
自営業者の老後は、公的年金だけで設計しない方が安全です。配偶者の年金、制度改正リスク、NISA、不動産まで含めて総合で考えます。

ここは競合記事が薄い部分。社労士として、そしてフリーランス経験者として、私が実際に気にしているポイントを書きます。
配偶者(第1号被保険者)の年金と対策
自営業者の配偶者は、会社員の妻と違って自分で国民年金保険料を納める第1号被保険者です。
つまり夫婦2人分の老齢基礎年金しかないのが基本形。見落とされがちですが、配偶者の分も付加年金やiDeCoで上乗せを検討すると、世帯の老後資金が大きく変わります。
制度改正リスクとマクロ経済スライドの影響
年金額はマクロ経済スライドにより、物価や賃金の伸びより抑えられる形で調整されます。
つまり今の満額がそのまま将来も保たれる保証はありません。だからこそ、公的年金を土台にしつつ、自分で増やせる部分を厚くしておく発想が要ります。
NISAなど年金以外の備えとの比較
老後資金はiDeCoだけでなく、NISAなどと組み合わせて準備するのが現実的です。
iDeCoは原則60歳まで引き出せませんが、NISAはいつでも引き出せます。自営業は収入が不安定だからこそ、引き出せる資金と引き出せない資金のバランスが大事です。私はここを一番重視しています。
| 手段 | 引き出しやすさ | 税の優遇 | 向く使い方 |
|---|---|---|---|
| iDeCo | 原則60歳まで不可 | 掛金が全額所得控除 | 老後専用の資金作り |
| 国民年金基金 | 老後の受取が中心 | 掛金が全額所得控除 | 終身の上乗せ |
| NISA | いつでも可能 | 運用益が非課税 | 柔軟に使える備え |
年金が不足したときの不動産活用(リバースモーゲージ等)
年金や貯蓄が不足したとき、自宅を活用して資金を得る選択肢としてリバースモーゲージやリースバックがあります。
リバースモーゲージは自宅を担保に借り入れる仕組み、リースバックは自宅を売って賃貸として住み続ける仕組みです。最後の手段に近いので、まずは現役のうちの上乗せ対策を優先してほしいというのが正直な意見です。
自営業の年金に関するよくある質問と手続き

年金番号の確認から65歳の受給手続き、住所変更まで、つまずきやすいポイントを社労士の視点でまとめます。
窓口でよく聞かれる質問を中心に、手続きの実際を具体的に答えます。
基礎年金番号の確認・年金手帳を紛失したとき
基礎年金番号は、基礎年金番号通知書や年金手帳、年金の各種通知で確認できます。
紛失しても再発行が可能です。年金事務所で手続きできるので、慌てずに本人確認書類を持って相談すれば大丈夫です。
65歳で年金は自動的に受け取れるのか
65歳になっても、年金は自動では始まりません。受け取るには自分での請求手続きが必要です。
受給開始が近づくと案内が届きます。請求を忘れると受け取りが遅れるので、書類が来たら早めに動いてください。
住所変更や働き方が変わったときの手続き
住所が変わったときや、自営業から会社員へ転身したときは、年金の手続きが必要になる場合があります。
会社員になれば第1号から第2号被保険者へ切り替わり、勤務先経由で厚生年金に加入します。逆に独立したら自分で国民年金へ切り替えます。私自身、退職して開業したとき市区町村窓口で第1号への切り替えをしました。働き方が変わったら、まず自分がどの被保険者かを確認するのが第一歩です。
