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個人事業主の年金対策5選|iDeCo・国民年金基金・付加年金を比較

田中 さやか / 更新:2026-06-19
個人事業主の年金対策5選|iDeCo・国民年金基金・付加年金を比較
「個人事業主は国民年金だけ」と知って、老後が急に不安になった——そんな相談を私は何度も受けてきました。結論を先に言うと、国民年金だけでは老後資金は足りません。だからこそ上乗せ制度を使います。

私は社労士として8年、会社員からフリーランスへの切り替え手続きを数えきれないほど見てきました。自分自身も3年フリーで働いた経験があります。その立場で正直に書きます。

この記事で分かるのは、iDeCo・国民年金基金・付加年金・小規模企業共済・民間個人年金の5つの違い、掛金の上限と併用可否、所得別の節税効果、そして始め方の手続きまでです。自分に合う組み合わせを決めるところまで持っていきます。

個人事業主の年金とは?厚生年金に入れない仕組みを解説

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まず大前提から。個人事業主・フリーランスは、原則として国民年金の第1号被保険者です。会社員のような厚生年金には入れません。

個人事業主・フリーランスは国民年金だけになる理由

日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は、原則として国民年金に加入します。会社員や公務員など厚生年金加入者を除いた人が第1号被保険者です。個人事業主はここに入ります。

厚生年金は「会社に雇われている人」のための制度です。事業主と本人で保険料を折半する仕組みなので、雇われていない個人事業主には適用されません。ここが会社員との一番大きな分かれ目です。

会社員との受取額の差

国民年金は2階建ての「1階」部分だけ。会社員はこの上に厚生年金(2階)が乗ります。個人事業主には2階がない。これが受取額の差に直結します。

老齢基礎年金の満額は2025年度で年額831,700円、月額にすると約69,308円です。40年間きっちり納めてこの額。これだけで生活するのは、正直かなり厳しい。

国民年金(基礎年金)の基本数値(2025年度)
項目内容
保険料(月額)17,510円
満額の年金額年額831,700円(月額約69,308円)
満額の条件20歳〜60歳まで40年間納付
受給開始原則65歳(受給資格期間10年以上)

老後の生活費はどのくらいかかるのか

月約6.9万円の基礎年金に対して、現実の生活費がいくらかかるか。ここは公的な確定数値を持っていないので具体額の断定は避けます。

ただ一つ言えるのは、基礎年金だけでは家賃・食費・医療費を賄いきれない人がほとんどだということ。だから上乗せを早く始めるほど効きます。次の章で5つの選択肢を整理します。

個人事業主が使える年金の上乗せ制度5選

国民年金(基礎年金)の上に積める制度は、大きく5つ。付加年金・国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済・民間個人年金です。それぞれ性格がまったく違います。

個人事業主が使える年金の上乗せ制度5選

国民年金・付加年金

付加年金は、国民年金保険料に月額400円を上乗せするだけの制度です。将来の年金額が「200円×納付月数」増えます。

正直、これは入れる人なら全員入っていいレベル。たとえば10年(120カ月)納めると、上乗せ保険料は合計48,000円。増える年金は年24,000円です。2年で元が取れる。私が窓口で必ず勧める制度です。

対象は国民年金第1号被保険者など。厚生年金加入者は使えません。なお後述しますが、付加年金と国民年金基金は同時に使えない点だけ注意してください。

国民年金基金

国民年金基金は、第1号被保険者などが老齢基礎年金に上乗せできる公的な任意制度です。個人事業主が「厚生年金の代わり」として検討することが多い制度です。

掛金は口数・加入時年齢・性別で決まり、上限は月額68,000円。終身年金が基本なので、長生きするほど得をする設計です。

ただし一度入ると基本的に途中で任意にやめられません。ここは後でデメリットとして詳しく書きます。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoは、自分で掛金を出して運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金です。個人事業主の拠出限度額は月額68,000円。

最大の魅力は税制。掛金が全額所得控除になり、運用益も非課税です。運用先を自分で選ぶので増える可能性もあるが、元本割れの可能性もある。ここが国民年金基金との性格の違いです。

小規模企業共済

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者のための「退職金の積立」制度です。年金というより廃業・引退時のまとまった資金づくりに使います。

私がこの制度を勧める理由は、掛金が全額所得控除になるうえ、納付した掛金の範囲内で事業資金の貸付が受けられる点。手元資金が不安な個人事業主にとって、この貸付制度は意外と心強い。

民間の個人年金保険

民間の保険会社が販売する個人年金保険も選択肢です。公的制度を使い切ったあとの「追加枠」という位置づけ。

正直に言うと、私は優先順位を下げています。所得控除の枠が小さく、低金利下では増えにくいからです。iDeCoや国民年金基金の上限を使い切ってから検討する、くらいの順番でいいと考えています。

各制度の併用可否と掛金上限を整理

ここがこの記事で一番大事な部分。制度は組み合わせられますが、上限が共有されているものがあります。ここを間違えると損します。

各制度の併用可否と掛金上限を整理

どの制度を組み合わせられるか

覚えておくべき重要ルールは2つ。1つ目、付加年金と国民年金基金は同時加入できません。どちらか一方です。

2つ目、iDeCoと国民年金基金は掛金の合計が月額68,000円までという共通の枠で管理されます。両方やる場合、合算で6.8万円を超えられません。

上乗せ制度の併用可否(個人事業主の場合)
制度の組み合わせ可否注意点
付加年金 × 国民年金基金併用不可どちらか一方のみ
iDeCo × 国民年金基金併用可合算で月68,000円が上限
iDeCo × 付加年金併用可それぞれ別枠で加入できる
小規模企業共済 × 上記すべて併用可共済は別枠(独立した上限)
民間個人年金 × 上記すべて併用可上限の制約はないが控除枠は小さい

掛金の上限と全体のバランス

上限を一覧にしておきます。数字を見ると、どこに枠が集中しているかが分かります。

各制度の掛金上限(個人事業主)
制度掛金上限枠の扱い
付加年金月額400円定額
国民年金基金月額68,000円iDeCoと共通枠
iDeCo月額68,000円国民年金基金と共通枠
小規模企業共済別枠(独立)年金制度の枠とは別

私が実際に組むなら、まず付加年金(月400円)を入れる。次にiDeCoで運用枠を確保しつつ、退職金代わりに小規模企業共済を足す。この3つは枠が独立または共存できるので相性がいい。

節税できる金額の目安(所得別)

iDeCo・国民年金基金・小規模企業共済の掛金は全額が所得控除になります。節税額は「掛金 × 所得税率+住民税率」でざっくり計算できます。

住民税は一律10%。これに所得に応じた所得税率が乗ります。たとえば課税所得が多く所得税率20%の人なら、掛金に対して合計30%が戻る計算です。

月6.8万円(年81.6万円)をiDeCoに拠出した場合、税率30%の人なら年間約24.5万円の節税。これは出した数字を制度の控除ルールに当てはめた私の試算です。掛けるほど効く、というのが正直な実感です。

始める前に知っておきたいデメリットとリスク

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ここを飛ばして始めると後悔します。私が窓口で「待って」と止めることが多いのも、まさにこの部分。慎重に読んでください。

途中解約や引き出しの制限

iDeCoは原則60歳まで引き出せません。これは老後資金専用の制度だからです。生活防衛資金まで突っ込むと、いざというとき困ります。

国民年金基金も、加入後に任意でやめることが基本的にできません。一度決めた口数は長く続く前提。ここはiDeCo以上に重い縛りだと考えてください。

運用リスクとインフレへの対応

iDeCoは自分で運用先を選ぶため、元本割れの可能性があります。投資信託で運用すれば増える期待もあるが、下がる年もある。

一方、国民年金基金は給付額が決まっている代わりに、将来の物価が上がっても受取額が大きく増えるわけではない。インフレに弱い面があります。守りの国民年金基金、攻めのiDeCo、と私は整理しています。

受取時にかかる税金(退職所得控除・公的年金等控除)

見落とされがちですが、これらの制度は受け取るときに課税されます。ただし大きな控除があります。

一時金で受け取れば「退職所得控除」、年金形式で受け取れば「公的年金等控除」が使えます。小規模企業共済の一括受取やiDeCoの一時金は、退職所得控除の対象になり税負担が軽くなります。受け取り方で手取りが変わるので、出口は必ず設計してください。

遺族・障害時の保障の違い

万一のときの保障も制度ごとに差があります。国民年金には、要件を満たせば障害基礎年金・遺族基礎年金があります。これは個人事業主でも受け取れます。

iDeCoや小規模企業共済は、本人が亡くなった場合に積み立てた資産が遺族に支払われます。掛け捨てではない点は安心材料です。

年代・所得別に見る制度の選び方と優先順位

同じ制度でも、始める年齢で効き方が変わります。早いほど運用期間と納付月数が伸びるからです。20歳と40歳で比べてみます。

年代・所得別に見る制度の選び方と優先順位

20歳から始めた場合

20歳スタートの最大の武器は「時間」。たとえば付加年金を20歳から60歳まで40年(480カ月)納めると、上乗せ保険料は合計192,000円。増える年金は年96,000円です。2年で元が取れ、あとは長生きするほど得。

iDeCoも運用期間が40年近く取れるので、複利が大きく働きます。若いうちは無理のない額でいいので、とにかく早く枠を開けておくのが正解だと私は考えます。

40歳から始めた場合

40歳からだと運用期間は20年ほど。時間が短いぶん、節税効果をはっきり取りに行く戦略が向きます。

所得がある程度ある40代なら、iDeCoと小規模企業共済の所得控除をフル活用するのが効きます。毎年の税金を確実に減らしながら老後資金を積める。リスクを取りにくい年代なら、終身の国民年金基金を厚めにする選択も悪くありません。

つみたて投資との使い分け

「NISAだけでよくない?」とよく聞かれます。私の答えは、目的が違うので両方使う、です。

NISAは運用益が非課税ですが、掛金の所得控除はありません。iDeCoや共済は掛金が所得控除になる代わりに、原則60歳まで引き出せない。いつでも引き出せる柔軟さがほしいならNISA、毎年の節税と老後資金の確保ならiDeCo・共済。役割を分けて持つのが現実的です。

収入が減ったとき・法人化したときの対応

フリーランスは収入の波が大きい。だから「払えなくなったらどうするか」を先に知っておくと安心して始められます。私が実際に相談を受ける典型例で説明します。

収入が減ったとき・法人化したときの対応

廃業や休業で掛金を払えないとき

国民年金の保険料そのものが払えないときは、放置せず免除・納付猶予の申請をしてください。未納のまま放置すると、障害基礎年金や遺族基礎年金の保障にも影響します。

小規模企業共済は、廃業時にこそ共済金が受け取れる設計。むしろ廃業時の受け皿になります。

収入減少時の掛金の変更・停止

iDeCoは掛金額を年1回変更でき、一時的に拠出を止めることもできます。収入が細った時期は最低額まで下げる、止める、で乗り切れます。

小規模企業共済も掛金を月1,000円単位で増減できます。柔軟さで言えば、この2つは収入が不安定な個人事業主と相性がいい。逆に国民年金基金は減額の自由度が低いので、最初から無理のない口数にしておくのが鉄則です。

法人成りしたときの制度の切り替え

法人化して自分が役員になると、厚生年金に加入することになります。第1号被保険者ではなくなるため、国民年金基金や付加年金は使えなくなります。

iDeCoは継続できますが、会社員区分になり拠出限度額が変わります。小規模企業共済は一定の条件で続けられる場合があります。法人成りを考えているなら、加入前に「やめにくい制度」を入れすぎない。これは私が必ず助言するポイントです。

個人事業主の年金の始め方と手続き

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ここまで来たら、あとは動くだけ。窓口と必要書類を制度ごとに整理します。国民年金の手続きは、退職して個人事業主になった時点で必須です。

申込窓口と必要書類

制度ごとに申込先が違います。ここを表で押さえておけば迷いません。

各制度の申込窓口
制度申込窓口
国民年金市区町村の役所(年金担当窓口)
付加年金市区町村の役所(国民年金と同じ窓口)
国民年金基金国民年金基金連合会・各基金
iDeCo金融機関(銀行・証券会社など)
小規模企業共済中小機構(委託の金融機関・商工会等経由)

共通して使うのは、本人確認書類と基礎年金番号が分かるもの。iDeCoや共済は金融機関の口座情報も用意します。

国民年金の加入手続き

会社を辞めて個人事業主になったら、退職日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口で第1号被保険者への切り替え手続きをします。

持ち物は年金手帳または基礎年金番号通知書、退職日が分かる書類(離職票など)、本人確認書類。付加年金に入るなら、この同じ窓口で「付加保険料納付の申出」を一緒に出せます。手続きはここでまとめると効率的です。

確定申告で控除を受ける方法

払った保険料・掛金は、確定申告で控除して初めて節税になります。ここを忘れると、せっかくの控除が消えます。

国民年金は「社会保険料控除」、iDeCo・国民年金基金は「小規模企業共済等掛金控除」、小規模企業共済も同じ「小規模企業共済等掛金控除」で申告します。

必要なのは、各機関から届く控除証明書(国民年金は控除証明書、iDeCoは小規模企業共済等掛金払込証明書など)。確定申告書の該当欄に金額を記入し、証明書を添付または保管します。証明書は秋以降に届くので、なくさないこと。

よくある質問(FAQ)

最後に、相談現場で本当によく聞かれる3つに答えます。短く要点だけ。

よくある質問(FAQ)

よくある質問

個人事業主の年金とは?
個人事業主は国民年金の第1号被保険者として基礎年金に加入します。これだけでは老後資金が不足しがちなので、付加年金・国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済・民間個人年金といった上乗せ制度を任意で組み合わせて備えるのが基本です。
どのくらい費用がかかる?
国民年金保険料は2025年度で月額17,510円(収入にかかわらず定額)。上乗せでは付加年金が月400円、国民年金基金とiDeCoは合算で月68,000円が上限です。無理のない額から始められます。
何から始めればよい?
まず国民年金の切り替え手続きを役所で済ませ、同じ窓口で月400円の付加年金を申し込むのが第一歩。費用対効果が高く誰でも入りやすいからです。その上で所得に余裕があればiDeCoや小規模企業共済で節税しながら老後資金を積みます。

完璧な組み合わせを探して動けないより、まず付加年金とiDeCoの口座開設だけでも今日進めてほしい。早く始めた分だけ確実に効きます。迷ったら、所得控除の枠が大きいものから埋める——それが私の率直なおすすめです。

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田中 さやか

社会保険労務士(開業登録) ・ フリーランス経験3年を経て現在は法人・個人双方の社会保険手続きを支援
社労士歴8年

社会保険労務士として中小企業の労務手続きに携わる傍ら、自身もフリーランスとして働いた経験を持つ。国民健康保険や国民年金の切り替え手続きから個人型年金の選び方まで、実際の窓口対応や制度の一次情報をもとに、手順を具体的に解説することを心がけている。

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