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フリーランスの小規模企業共済3つのメリットと節税効果を徹底解説

田中 さやか / 更新:2026-06-20
フリーランスの小規模企業共済3つのメリットと節税効果を徹底解説
会社員には退職金があるのに、自分には何もない。フリーランスとして働き始めて、私が一番不安だったのがこれでした。結論から言うと、小規模企業共済は「掛金が全額所得控除になって節税しながら、自分の退職金を積み立てられる」制度です。フリーランスにとっては、まず検討すべき選択肢だと私は考えています。
  • 小規模企業共済は中小機構が運営する、個人事業主やフリーランスのための退職金制度。
  • 掛金は月額1,000円~70,000円、500円単位で自由に設定できる。
  • 支払った掛金は全額が所得控除になり、所得税・住民税が安くなる。
  • 20年(240か月)以下で任意解約すると元本割れの可能性があるため、長期で続ける前提で入るのが基本。
  • iDeCoと併用もできるが、資金が限られるなら使い道や受取時期で優先順位を決めるとよい。

フリーランスにとって小規模企業共済とは?まず知っておきたい結論

小規模企業共済のメリット・デメリット 個人事業主は入った方がいいの?
小規模企業共済のメリット・デメリット 個人事業主は入った方がいいの?

小規模企業共済とは、個人事業主やフリーランスが毎月掛金を積み立て、廃業や引退のときに退職金として受け取れる、中小機構が運営する公的な制度です。

会社員の退職金や企業年金にあたるものを、フリーランスが自分で用意する仕組み。私自身、フリーランス時代に「将来の備えがゼロ」という不安からこの制度を調べ始めました。

小規模企業共済の概要と仕組み

運営は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)です。小規模企業の経営者や個人事業主等のための退職金制度として案内されています。

毎月コツコツ掛金を払い込み、廃業時や65歳以降などの条件を満たしたときに、共済金としてまとめて受け取る。これが基本の流れです。

受け取り方は一括・分割・併用から選べます。ここが後で説明する税制メリットに効いてきます。

フリーランス・個人事業主が加入対象になる条件

フリーランスを含む個人事業主は、業種ごとの従業員数の上限を満たせば加入できます。

中小機構の案内では、業種ごとに常時使用する従業員数の上限が決まっています。一人で働くフリーランスは、この上限を気にする場面はほぼありません。

業種別の従業員数の目安
常時使用する従業員数の上限。中小機構の案内による。
業種従業員数の上限の目安
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)5人以下
それ以外の一定業種20人以下

なお、一定の条件を満たせば共同経営者も加入できます。1人の個人事業主につき2人までです。

掛金は月額いくらから設定できるか

掛金は月額1,000円から70,000円まで、500円単位で設定できます。

開業したばかりで収入が読めない時期は、まず月1,000円から始めても問題ありません。私が窓口で相談を受けるときも、最初は無理のない額を勧めています。

掛金は加入後に増額も減額もできます。所得が伸びてきたら上げる、という調整が可能です。

月70,000円まで掛ければ、年額で最大84万円を積み立てられます。この全額が所得控除の対象です。

フリーランスが小規模企業共済に加入する3つのメリット

フリーランスにとっての最大のメリットは、掛金が全額所得控除になり、節税しながら退職金を積み立てられることです。

フリーランスが小規模企業共済に加入する3つのメリット

メリットは大きく3つ。節税・受取時の税優遇・貸付制度です。順に見ていきます。

掛金が全額所得控除になり節税できる

支払った掛金は全額が課税対象所得から差し引かれ、所得税と住民税が軽くなります。

これが「小規模企業共済等掛金控除」です。生命保険料控除のように上限で頭打ちにならず、払った分がまるごと控除されるのが強みです。

正直、ここがこの制度を勧める一番の理由。貯金しているのに税金まで減る、という感覚に近いです。

受け取り時に退職所得控除などで税が優遇される

受け取るときも、退職所得控除などが使えて税負担が軽くなります。

共済金を一括で受け取ると「退職所得」として扱われ、分割で受け取ると「公的年金等」の扱いになります。どちらも控除の枠が大きく、現役時代の所得控除と二重に得をする形です。

つまり、積み立てるときも、受け取るときも税優遇がある。ここがただの貯金との決定的な違いです。

いざという時に使える貸付制度がある

加入者は、掛金の範囲内でお金を借りられる貸付制度を利用できます。

急な資金繰りや設備投資のとき、積み立てたお金を担保に借入ができる。フリーランスは収入が月によって波打つので、この「いざという時の引き出し口」があるのは心強いです。

具体的な金利や限度額は申込時点の条件によるため、利用前に必ず最新の案内を確認してください。

掛金月額別・年収別でみる節税効果シミュレーション

節税効果は、年収(課税所得)が高く掛金が多いほど大きくなり、年額84万円を満額掛ければ控除額も84万円になります。

掛金月額別・年収別でみる節税効果シミュレーション

ここからは、控除の仕組みをイメージしやすいように考え方を整理します。具体的な税額はその人の所得や他の控除で変わるため、以下は控除額そのものの話として読んでください。

年収300万円のフリーランスの試算例

開業して間もない年収300万円台なら、まず月1万~2万円あたりが現実的なラインだと私は考えています。

月1万円なら年12万円、月2万円なら年24万円が所得から控除されます。所得税率が低い段階でも住民税は一律10%なので、住民税分だけでも確実に効きます。

掛金月額と年間控除額の早見
控除額は支払った掛金の全額。実際の節税額は所得税率により異なる。
掛金月額年間掛金年間の所得控除額
1,000円12,000円12,000円
10,000円120,000円120,000円
30,000円360,000円360,000円
70,000円840,000円840,000円

年収600万円以上のフリーランスの試算例

課税所得が大きいほど所得税率が上がるため、年収600万円以上のフリーランスは満額に近い掛金で恩恵が大きくなります。

月70,000円・年84万円を掛ければ、その全額が所得から消えます。所得税率が20%や23%の層なら、所得税と住民税を合わせた軽減効果はかなり大きい。

私の感覚では、所得が安定して高めの人ほど「先に満額」を検討する価値があります。

確定申告での小規模企業共済等掛金控除の書き方

確定申告では「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、その年に払った掛金の合計額を記入します。

中小機構から届く「掛金払込証明書」を見ながら金額を転記し、その証明書を申告時に添付(または提示)します。これだけです。

払込証明書は年末から年明けにかけて郵送されます。なくすと再発行に時間がかかるので、届いたら申告まで保管しておきましょう。

加入前に知っておくべきデメリットと元本割れの注意点

【個人事業主必見】知ったら入れ!小規模企業共済
【個人事業主必見】知ったら入れ!小規模企業共済

最大の注意点は、20年(240か月)以下で任意解約すると元本割れの可能性があることです。

メリットの大きい制度ですが、ここは正直に伝えます。短期で抜けると損をしやすい。だからこそ、続けられる金額で始めるのが大前提です。

20年未満の解約で元本割れになる仕組み

任意解約は12か月未満だと解約手当金が受け取れず、20年以下での解約は元本割れの可能性があります。

払い込んだ期間が短いほど、戻ってくる割合が低くなる設計です。逆に言えば、長く続ければ続けるほど有利になります。

「とりあえず数年だけ」という使い方には向きません。長期前提で入るべき制度です。

掛金の減額・増額の最適なタイミング

掛金は加入後も増額・減額できるので、所得が増えた年に上げ、苦しい年に下げる調整が基本です。

私のおすすめは、所得が確定する年末ごろに翌年の掛金を見直すこと。利益が出た年は増額して節税、収入が落ちた年は無理せず減額、という運用が現実的です。

払えなくなって任意解約するくらいなら、まず減額を検討する。これが元本割れを避ける一番の防御策です。

受取区分ごとの税制と請求手続きの流れ

受け取りの理由によって共済金の区分が変わり、税の扱いも変わります。

案内では、廃業時や、65歳以上で180か月(15年)以上掛金を払い込んだ場合などに共済金の請求事由があるとされています。一括受取なら退職所得、分割受取なら公的年金等として扱われます。

どの区分になるかで手取りが変わるので、受け取る前に税の扱いを一度確認しておくと安心です。

iDeCoや国民年金基金との比較と優先順位の付け方

小規模企業共済とiDeCoはどちらも掛金が全額所得控除になり併用も可能ですが、お金の引き出しやすさと受取時期が違います。

iDeCoや国民年金基金との比較と優先順位の付け方

フリーランスが一番悩むのがこの組み合わせ。私の結論を先に言うと、「途中で使う可能性があるなら小規模企業共済、老後資金一本ならiDeCo」が分かりやすい目安です。

小規模企業共済とiDeCoの違いと併用戦略

小規模企業共済は廃業・引退に備える退職金、iDeCoは原則60歳まで引き出せない老後資金、という性格の違いがあります。

小規模企業共済には貸付制度があり、いざという時に積立金を担保にお金を回せます。iDeCoは原則60歳まで一切引き出せません。フリーランスの資金繰りの不安を考えると、流動性の差は大きいです。

小規模企業共済とiDeCoのざっくり比較
掛金上限は小規模企業共済が月70,000円。iDeCoの上限は加入区分により異なる。
項目小規模企業共済iDeCo
掛金の所得控除全額控除全額控除
掛金上限(月額)70,000円加入区分により異なる
途中の引き出し貸付制度あり原則60歳まで不可
主な目的廃業・引退の退職金老後資金

両方やる余裕があるなら、併用が王道。資金に限りがあるなら、次の優先順位で考えます。

国民年金基金・付加年金との使い分け

国民年金基金や付加年金は、将来受け取る公的年金そのものを上乗せする制度で、退職金型の小規模企業共済とは役割が違います。

付加年金は月400円の上乗せで、少額ですが効率がよい。国民年金基金は年金額を手厚くしたい人向けです。どちらも「年金を増やす」方向、小規模企業共済は「まとまった退職金を作る」方向、と整理すると迷いません。

限られた資金をどの制度に回すべきか

資金が限られるフリーランスは、まず付加年金、次に流動性のある小規模企業共済、その後にiDeCo、という順で私は考えています。

全部を満額やる必要はありません。途中で使うかもしれない不安が強い人ほど、引き出し手段のある小規模企業共済を先に。老後一本で割り切れる人はiDeCoを厚く。これが私の率直な勧め方です。

加入をおすすめできるフリーランス・できないフリーランス

長く事業を続ける見込みがあり、毎月一定額を続けられるフリーランスには向き、近い将来やめる予定や資金が常にギリギリの人には勧めにくい制度です。

加入をおすすめできるフリーランス・できないフリーランス

ここは両論併記でぼかさず書きます。続けられるかどうかが、得か損かの分かれ目です。

所得が不安定・インボイス制度導入後の加入判断

所得が不安定な人ほど、まず月1,000円~数千円の小さな掛金で始め、伸びた年に増額する形が安全です。

インボイス制度導入後、手取りが読みにくくなったという相談をよく受けます。そういう時こそ、最低額で枠だけ確保し、減額・増額で調整する。任意解約だけは避ける、という発想が効きます。

廃業・法人成り時の取り扱いと共済金請求

廃業は共済金の請求事由にあたり、退職金としての受け取りにつながります。

法人成りした場合の取り扱いは状況によって変わるため、移行を考えるなら事前に中小機構へ確認するのが確実です。ここは個別事情の影響が大きく、安易に断定できません。

加入者の体験談から見える後悔ポイント

後悔として多いのは、無理な満額設定で続かなくなり、短期で解約して元本割れしたケースです。

私が見てきた範囲でも、最初に張り切りすぎる人ほどつまずきます。逆に、低い掛金で淡々と続けた人は、節税を享受しながら着実に積み上げていました。最初の掛金設定を控えめにする。これが後悔を避ける最大のコツです。

小規模企業共済の始め方と加入手続き

【完全版】これを見れば小規模企業共済の全てがわかります!
【完全版】これを見れば小規模企業共済の全てがわかります!

加入は、必要書類を用意して中小機構の委託機関(金融機関や商工会など)で申し込むだけで、開業初期からでも始められます。

手続き自体は難しくありません。私が窓口で案内するときも、書類さえそろえば短時間で終わります。

加入に必要な書類と申込みの流れ

個人事業主なら、確定申告書の控えなど事業を営んでいることが分かる書類と、契約申込書・預金口座振替申出書を用意します。

  1. 事業を営んでいることが確認できる書類(確定申告書の控えなど)を準備する。
  2. 契約申込書と預金口座振替申出書に必要事項を記入する。
  3. 委託機関(金融機関の窓口や商工会・商工会議所など)で申し込む。
  4. 掛金月額を決めて口座振替を設定する。

開業したての年で確定申告がまだない場合は、開業届の控えなどで代替できることがあります。詳しくは申込窓口で確認してください。

受け取りまでの期間と請求方法

共済金は、廃業や引退などの請求事由が生じたときに、所定の請求書類を提出して受け取ります。

一括・分割・併用から受取方法を選べます。具体的な必要書類や振込までの期間は請求事由ごとに異なるため、請求時点の最新案内に沿って手続きしてください。

フリーランスの小規模企業共済に関するよくある質問

よくある質問

フリーランスにとって小規模企業共済のメリットとは?
最大のメリットは、掛金が全額所得控除になり所得税・住民税を節税しながら、退職金を積み立てられることです。受け取り時も退職所得控除などで税が優遇され、加入中は貸付制度も使えます。会社員の退職金にあたるものを自分で用意でき、節税と将来の備えを同時に進められます。
小規模企業共済の費用(掛金)はいくらから始められる?
掛金は月額1,000円から70,000円まで、500円単位で設定できます。年額では最大84万円まで掛けられ、その全額が所得控除の対象です。加入後に増額・減額もできるので、開業初期は1,000円から始め、所得が伸びた年に上げる調整が可能です。
小規模企業共済の始め方は?
事業を営んでいることが分かる書類(確定申告書の控えなど)と、契約申込書・預金口座振替申出書を用意し、金融機関や商工会などの委託機関で申し込みます。掛金月額を決めて口座振替を設定すれば加入完了です。電子申込サービスも用意されています。
20年未満で解約すると損をする?
任意解約は12か月未満だと解約手当金が受け取れず、20年(240か月)以下での解約は元本割れの可能性があります。短期での解約には向かないため、続けられる掛金で長期加入を前提に始めるのが基本です。払い続けるのが苦しいときは、解約より先に減額を検討してください。
iDeCoとどちらを優先すべき?
途中で資金が必要になる可能性があるなら、貸付制度のある小規模企業共済が向きます。老後資金として割り切れるならiDeCoを厚くする選択もあります。どちらも掛金が全額所得控除になり併用も可能なので、資金に余裕があれば両方使うのが王道です。

最後に私から一言。小規模企業共済は「続けられる金額で、早く始めて、長く払う」が正解に近い制度です。開業初期の月1,000円からでいいので、まずは枠を作っておくことをお勧めします。

フリーランスの小規模企業共済に関するよくある質問
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田中 さやか

社会保険労務士(開業登録) ・ フリーランス経験3年を経て現在は法人・個人双方の社会保険手続きを支援
社労士歴8年

社会保険労務士として中小企業の労務手続きに携わる傍ら、自身もフリーランスとして働いた経験を持つ。国民健康保険や国民年金の切り替え手続きから個人型年金の選び方まで、実際の窓口対応や制度の一次情報をもとに、手順を具体的に解説することを心がけている。

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